鈴北糸の雑記帳

三人組創作ユニットがなんとなく始めたブログ。

19ページ目:疲れに効くのは

 岡本ミオは、ついに今年干支を2周した。大学生の時から数えて今年で5年目になる独身生活も、それなりに楽しめるようになってきた。演劇サークルやボランティア、三味線教室など様々なことに手を出していた大学生時代と同じく、平日は仕事に忙殺される日々を過ごしていたものの、週末には思いつきで映画を観に行ったり家でアロマキャンドルを焚きながらYouTubeを観たりしていた。

 しかし、先週末にヒールを履いて出かけた辺りからミオは疲れを感じていた。久しぶりにヒールを履いたせいか、両足が痛む。1日くらい放置すれば治ると思っていたが、2日経っても痛みは引かず、そればかりかふくらはぎが攣りそうな痛みまで出てきてしまった。

「歳かな。」

仕事終わり、ミオは独りごちた。干支を2周すると、足の痛みは1日やそこらでは治らなくなるのだ。おまけに最近は食欲が無いのを良いことに自炊を怠っていたせいか、肌荒れもひどくなっていた。本当ならば残業して片付けた方が良い仕事があったのだが、疲れがピークに達していたので放置して帰ってきてしまった。大丈夫。明日頑張ればなんとか終わるだろう。冷たい風に背中を押され、ミオは会社を後にした。

「薬局に寄って、湿布を買って帰ろう。」

 

大学生の頃は楽しくて仕方なかったメイクも、ここ最近は面倒くさいが勝ってしまう。週末はほとんどすっぴんで過ごすし、新しいコスメを買う意欲も無くなっていた。大学生の頃は毎週のようにリップやアイシャドウを見ては心を躍らせていたのに。ミオはソファーに横たわり、スマホで検索をかけてみた。

“20代 メイク 楽しくなくなった”

“メイク 興味がなくなった”

するとびっくり。現代ではメイクが楽しくなくなってくるのは、大体40代くらいで生じる現象のようだ。私の歳では、まだ新作コスメに心を躍らせている方が正常らしい。ある場合を除いては。

“もしかして、鬱かも?心の健康チェック!”

こんなものを律義にやるつもりは毛頭ないのだが、画面をスクロールしていくと思い当たる選択肢がいくつかあった。

・寝つきが悪い

・朝早く目が覚める

・普段楽しめていたことが楽しめない

・食欲がなくなった

鬱かもしれない。でも、ネットの診断で決めつけるのは良くないだろう。最近はこれらを全て歳のせいにしていたが、それもあながち間違いではないかもしれない。足の痛みが中々取れないように、心の疲れも年を取ると中々取れなくなってくるのだろう。せっかく早く帰ってきたのだし、今日はもうSNSをオフにしてリラックスしよう。時計の針は、まだ19時を指したばかりだ。

 

今日のリラックスメニューは、

その一

自炊をして温かいものを食べる。

その二

お湯を張って、良い香りの入浴剤を入れる。音楽を聴きながら湯船に浸かる。

その三

ボディークリームを塗って、足のマッサージをする。

その四

アロマキャンドルを焚いて、読書をする。

その五

日付が変わるまでに寝る。

 

スマホのあらゆる通知を切り、バスルームへと向かった。料理を作る前に、まずはメイクを落としたい。

「あ、そういえば」

さっき薬局に湿布を買いに寄ったのだが、ついでに週末に観たYouTubeで紹介されていたクレンジングバームなるものを買ってみたのだ。

“乾いた手肌に、付属のスプーン1杯分の本品を取り顔全体に広げてください”

固そうな見た目をしたバームだったが、取ってみると案外柔らかかった。それを手に取り、顔に広げてみると…

「何これ!?めちゃくちゃ気持ちいい!」

それまで、クレンジングにはオイルを使っていた。昔単発のアルバイトで出入りしたことのあるコスメカウンターでも、同じクレンジングオイルを化粧品の付属ブラシやパフの洗浄に使っていた。だから、きっと安くともメイク落ちの良い商品なのだろうと信じていたのだ。しかし、最近になってそのクレンジングオイルではアイラインや目の際のアイシャドウが落ちにくい事に気付いた。おまけに、クレンジング後の顔の乾燥が著しい。なんとかならないかと思い様々なコスメを紹介しているYouTubeを検索したところ、クレンジングバームに行きついたのだ。顔に広げたクレンジングバームでしばらく顔をマッサージし、お湯で流した。とろけるような感触のバームで、メイクの下に隠した疲れごとごっそり落ちた気がした。

 その日は寒かったので、白菜とニラと豚肉を入れたシンプルなキムチ鍋を作った。不思議なことに、温かい鍋は食欲が無くてもすんなりと体に沁み入ってきた。片付けをした後、浴槽にお湯を溜めて入浴剤を入れた。入浴剤を選んでいる時、残りの在庫が少ない事に気が付く。最近、ゆっくりお風呂に浸かる時間も無かったもんなぁ。今週末は駅の方面へ美容院を予約してある。その帰りに、入浴剤をたくさん買って帰ろう。

 薄緑の入浴剤がとけた湯船に浸かる。脱衣所の洗濯機の上に置いたスマホから流れる音楽が心地良い。最近のアーティストの曲ではないが、昔だと感じさせないオシャレな曲を流している。ヒールで痛んだ足を軽く揉み、肩まで温める。今日はすぐに眠りにつけそうだ。

お湯を楽しんだ後、リビングに戻りアロマキャンドルを焚いた。香りは控えめだが、この温い色合いの炎がミオは大好きだ。ベッドに座りボディークリームを塗ると、いつの間にか時計の針が23時を指していた。女は、夜支度にも時間がかかるのだ。仕方がない。

目覚ましを忘れずにセットした後、積読になっていたエッセイに手を伸ばした。美大出身の女性が、様々な美術展を巡った際の感想を徒然に記したものだ。ミオは普段美術館にはあまり行かないのだが、別に芸術を観ることは嫌いではない。しかし、アートという世界は普段馴染みがないはずなのに、著者が使う現代チックな感性の文筆は妙な親近感がある。まるで、夜に酒を飲みながら別の会社に勤める友達と互いに仕事の愚痴を喋っているかのようだ。しばらくエッセイを読んでいたが、良い所で閉じ今度は小説に手を伸ばした。ミステリー大賞を受賞した作品のようだ。登場人物はヤクザ絡みの男二人と、部品屋を営む父娘と、とある宗教の教祖の一人娘。なんだかおもしろい展開になりそうだったが、さすがに眠くなってきた。時計の針はいつの間にか0時を回っていた。

「続き気になるけど、もう寝よう」

おやすみ。この話の続きは、また今度。干支を2周したミオの心の疲れは、週末のお出かけでもなくキラキラとしたコスメでもなく、5時間のリラックスタイムが治してくれたのだった。

 

 

 

皆さんこんばんは!北です。

最近、鈴北糸の活動で悩んでいたことは、

週1のブログ更新だけで手一杯で、全然創作活動ができない!!

ということでした。

その時思ったんです。

最近自分の身に起きたことを創作調で書けば一石二鳥なのでは?と。

てなわけで、最近の北をミオちゃんに乗せて書いてみました。

いかがだったでしょうか。

ちなみにこのお話の世界でのミオちゃんは現実世界での北なので、もちろんお話に登場する物には全て実在するモデルがあります。今週末、北が美容院に行くのも本当です(笑)

クレンジングバームを使うに際して、ミオちゃんがインスパイアされたYouTuberは、コスメオタチャンネルのサラさんです。使用したクレンジングバームはロゼットの夢見るバーム。また、入浴中に流していた曲はm-floの曲です。Come againとNo questionがお気に入りです。さらに、ミオちゃんが読んでいたアートのエッセイは、山内マリコ著「山内マリコの 美術館は一人で行く派展」、小説の方は平井紀一著「甘美なる誘拐」です。

山内マリコさんの文体はとても好みだったので、別の本も探して読んでみたいですね。甘美なる誘拐は、残念ながら誘拐された所で眠さが勝ってしまったため続きはまたのお楽しみ。

皆さんは疲れた時にどんな本を読みますか?オススメがあればコメントで是非教えてください(/・ω・)/

それでは~~

 

*おまけ*

ブログをお休みしていた期間に、漢字検定の本番があったのですが…

激ムズでした!!!!!!

問題用紙を開いたら、半分くらいが初めましての問題でもはや笑いました。

一応市販の問題集は一通りやったんだけどなぁ~~

200点満点で、何点あるかお楽しみですね(笑)予想は半分の100点です!